芝居


バレエを初めて1年位が過ぎたある日、当時の殺陣の先生に「知り合いのバレエの公演があるんだけどでてみる?」と聞かれたので「はい、お願いします。」と答えると、数日後バレエ団の方から電話がかかってきた。

その方は出演にあたって幾つかお尋ねしたいことがあるのですがと前置きすると、

女性「バレエ歴はどれくらいですか?」
私    「5年位です。」
女性「・・・」

たった5年と思っているようだが実際は1年だ。

女性「何々できますか?」
私「はい、できます。」

何かの技の名前をいっているようだが全くわからない。

女性「では何々はできますか?」
私「はい、できます。」

これもわからない。

女性「ではお願い致します。」
私「はい、よろしくお願い致します。」

ということで出演が決まった。

そのバレエ団はある地方の有名なバレエ団で、今回の公演はプリマが2代目に代わる大切な公演なのだが、男性があまりいないため全国から踊れる男性を数人呼び寄せたらしい。

その中にバレエ歴1年の私がいた。

私も悪いが、私の先生はもっと悪い。

公演の三週間前に集まって三日間で振りを覚えて、一週間前に再び集まって稽古して本番を迎えるという日程である。

全ての交通費(飛行機)、宿泊費、稽古のギャラも出る。

そして全国から呼び寄せられた男性ダンサーとの初顔合わせ。

簡単に自己紹介をすると、劇団四季で踊ってましたとか、有名バレエ団で現役で踊っていますという方たちばかりだ。

そんななか私は近所のバレエ教室の名前を出した。

皆顔を見合わせている。

当然誰も知らない。

そこから私の長い苦しい芝居が始まった。

早速稽古が始まるということでウォーミングアップ。

男性ダンサーたちはピルエットを何回まわれるかという勝負をして楽しんでいる。

これがバレエのコミュニケーションの取り方なのか。

10回転位するとそのバレエ団の方たちから歓声が上がる。

コマのようだ。

ちなみに私の実力は1回転半位だ。

見た感じバレエ団約50名を含めた中で私が一番下手だ。

私はできる限り動かず、ひたすらストレッチをしていた。

続く。

続かないかもしれない。

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