ー 以上に述べたように、我が二天一流の兵法の道は、朝な夕なに修練を積むことによって、自然と視野も広がり、「合戦および個人戦の兵法」として世に伝えるのである。
我が兵法を学ぼうと思う人には、道を行う次の「九か条の戒め」を心がけてほしい。
第一条 よこしまな心を起こさず、正しいことを考えること。
第二条 兵法の道は鍛錬にあるということ。
第三譲 諸芸に触れること。
第四条 様々な職能の道を知ること
第五条 物事の利害損害を知ること。
第六条 物事の本質を見極められる眼力を持つこと。
第七条 目には映らないところも推理し、察知すること。
第八条 微細な変化・動きも見逃さないこと。
第九条 役立たないことはやらないこと。
およそこうしたことを心にかけて、兵法の道を鍛錬しなければならない。
我が二天一流の兵法を極めようとする気力をみなぎらせ、真の兵法の道に励んで、腕力で相手に打ち勝ち、眼力でも相手を圧倒し、さらなる鍛錬を重ねることで全身を自由自在に動かすことができれば、肉体的にも相手を圧倒できるし、またこの道に習熟していれば、闘魂でも相手をしのげるはずだ。
いわゆる心技体の全てで相手を凌駕できていれば、どうして負けることがあろう。
また、優れた部下を持つ点で勝ち、多くの軍勢を動かす点で勝ち、一身を正しく律する道でも勝ち、藩を治めることでも勝ち、領民を安堵させることに勝ち、世の中に礼儀作法を徹底するということでも勝つというように、いかなる道においても、どんな相手にも負けないという道理を悟って、我が身を正しく保ち、名を上げるように刻苦勉励するのである。
それが、我が二天一流の兵法の道である。
1645年5月12日 新免武蔵