五輪書 地之巻9


ー 兵法の拍子のこと

どんな物事にも「拍子」というものがあるが、なかでも「兵法の拍子」は、鍛錬していないと体得するのは難しい。
世の中によく知られている拍子では、能の舞の拍子、楽人が奏でる管弦音楽の拍子などがあるが、これらは拍子がうまく調和することで見事な拍子となる。
武芸の道を見ても、弓を射たり、鉄砲を撃ったりすることから乗馬に至るまで、全てに拍子・調子がある。
拍子は重要だ。諸芸能でも、拍子をないがしろにすることはありえないし、目に見えないものにも拍子がある。

「兵法の拍子」にも、様々な種類がある。
まず自分自身に合う拍子は何であるかを知り、合わない拍子は避け、大小・遅早の拍子の中で自分に合う拍子を知り、「間の拍子」を知ることで、相手の拍子に乗ることなく、逆に相手の拍子を狂わせることに専念することこそが、兵法の道である。
この「相手の拍子を崩す拍子」を体得しない限り、その兵法は確実なものにはならないのだ。
兵法を駆使した戦いでは、その折々の敵の拍子を知り、敵の意表をつく拍子を意識して目には見えない「空なる拍子」を我が二天一流の兵法の知略で生み出して相手に勝つのである。

本書のどの巻にも、もっぱら拍子のことを書き記すので、その内容をじっくり読みこなして、よく鍛錬してもらいたいものである。

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