五輪書 火之巻12


ー 移らかすということ

「移らかす(移る)」という現象は、さまざまなところで目にするものだ。たとえば、 眠気などは移るし、あくびなども移るものだ。時も移る。

大勢の合戦では、敵陣に落ち着きがなくなって、妙に決戦を急いでいる節が感じられたら、その様子にはまったく頓着していないふりをし、いかにもゆったりしているように見せかけると、その雰囲気が敵にも伝わって、敵の気持ちがだれるものである。
戦意に変化が生じたと判断したら、味方陣営は心を無念無想にし、一気呵成に激しい攻撃をかけて勝利をもぎ取るのだ。

一対一の勝負では、身も心もゆったりとしているように見せかけて、敵が油断したところを、強く激しく一気に先制攻撃をしかけて勝つのである。

また、「酔わせる」といって、これに似たやり方がある。一つは「嫌気が差すこと」、一つは「心に落ち着きがなくなること」、一つは「弱気の虫にとらわれること」で、 敵がそうなるように仕向けるのである。

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