夏がくうれば思い出す~♪


夏が来ると毎年思い出す事があります。

私が大学3年の頃だったと思います。

通っていた空手道場で合宿をすることになりました。

以前は毎年行われていたようですが、脱走が多いため中止になったようです。

しかし私達が道場に参加するようになったので、久し振りに合宿を再開しようということになりました。

大学の空手部からその道場へ何名か通っていたのですが、合宿が地獄絵図になることは分かっていたので、キャプテンの私と副キャプテンの二人しか参加しませんでした。

ということで夏休みの8月に、私達大学空手部、道場に通っていた高校空手部(男女)、一般道場生で3泊4日の合宿をすることになりました。

道場の一般の方も参加しますが、メインは私達空手部のレベルアップ。

合宿を道場で行うのはいいが、夜も道場で適当に寝ろという、今なら絶対に参加しない合宿です。
勿論エアコンも扇風機もありません。

まず初日。
ひたすら基本稽古。
ひたすら突いて端まで行って戻ってくる。
とにかく腰を落とさせる。
頭が上がると爆弾が飛んでくる。
とにかく全力で突かせる。
弱くなると爆弾が飛んでくる。

初日の午前中でもう帰りたい。

午後もひたすら基本稽古。

締めはスクワット300回。

これはまだ平気だったが、筋疲労の蓄積があるので既にグロッキーな人が結構いる。

夕方に稽古が終わってお風呂に入ってご飯を食べて寝る。

暑くて寝れん。

二日目。

朝起きると、男子高校生が一人しかいない。

5人脱走。

残った一人凄い。

女子は全員いる。

二日目は基本稽古と型と組手。

暑いとか、きついとか、休みたいとか、できるだけ感情を持たずに、ただ体を動かすことを覚えた。

締めはスクワット400回。

何とも思わない。

三日目。

朝起きたらいきなり山の頂上まで走ってこいと言う。

そんなに高い山ではないが、道場から走って2時間はかかる。

一歩も歩くなと言う。

私は副キャプテンと共に先頭を走っていた。

坂道を走るのはきついが、時間制限が無いので自分のペースで走れるし、まあ何とか頂上まで歩かずに行けるかなと思った。

頂上に着くと暫く休んで、帰りは歩いていいということだったのでゆっくり坂道を歩いていた。

暫くすると、残りのエネルギーが2くらいしかなさそうな顔をしている男子高校生が坂道を走ってくるのが見えた。

そんな状態でも歩かずに走るなんて根性あるなと思ったら、後にコーチがいる。

高校生が力尽きて立ち止まると、後からコーチが思いっきり蹴る。

その反動で走り出す。

暫くすると止まる。

後から蹴る。

反動で進む。

やがて止まる。

反動で進む。

止まる。

反動で進む。

流石にもう無理だと思ったが、蹴るとちょっと進む。

コーチの前蹴り強化トレーニングになっている。

そのまま見えなくなるまで登っていった。
蹴られていった。

それから30分位経って、凄い勢いでさっきの高校生が走ってきた。

何とか頂上まで辿り着いたようだが、何で走っているんだ??

びっくりしてその高校生を止めて、帰りは歩いていいって言ってたし、午後の稽古もあるから体力を温存したほうがいいよ。

と言ったのだが、

興奮状態で、

「大丈夫です!頑張ります!道場まで走って帰ります!」

と言って、いくら止めても聞かない。

しょうがないので先に行ってもらって、私達はゆっくり道場まで歩いていった。

そして道場に着くと、入口でさっきの高校生が倒れている。

コーチが手当てをしているが意識が朦朧としている。

大丈夫か?と声をかけると、一瞬目を開けるが、何も言わずまた目を閉じる。

言わんこっちゃない。

なんで走ったんだ?

その瞬間、

ろうそくだ!!

と思った。

ろうそくは燃え尽きる前のほんの一瞬、炎が大きく燃え上がると言うが、まさにこれだ!

人間ろうそくだ!

ろうそく人間だ!!

口にすればウケると思ったが、コーチに殴られそうなので口にするのは控えた。

その後一度も彼を見ていない。

そして午後の稽古。

ボコボコボコの組手の稽古。

勿論コーチたちは手加減してくれているのだが、私達は既に力が出ない入らない状態。

そしてやっと組手が終わり、締めのスクワット。

初日300回、二日目400回だったので、今日は500回かと思っていたら、

「終わりと言うまでやっとけ。」

と言う。

言われるまま早速スクワットを始めたが、いやいやこれ物凄くきつい。

ゴールが見えないままのスクワットは精神的にかなりくる。

一応私達は数を数えながらスクワットをしていた。

これまでの蓄積もあるので300回くらいで既に限界にきている人もいる。

女子は泣いている。

泣いて立ち上がれなくなる。

バケツの水をかけられる。

ひしゃくの水ではなく、バケツの水。

いつの間にか水が入った大きなポリバケツが置いている。

それでも何とか全員でスクワットを続け、400回が過ぎた。

泣いてるしもう無理だし、500回で終わりと言ってくれるのではないかと、何となく皆が淡い期待を抱いていた。

そして500回が近づくにつれて、私達のテンションはだんだん上がっていき、かけ声もどんどん大きくなってきた。

泣きながら大声を出してスクワットをする。

何か妙な連帯感が生まれてきた。

普段から皆で練習をしてきたが、始めて感じる一体感。

そして全員で500!!!と言ったが、コーチは無反応。

私達は一瞬気が緩んでスクワットも止まりかけた。

その瞬間、「まだ終わりって言ってないぞ!」とコーチが言った。

連帯感も一体感も、
そんなの関係ねえ。

そこからは地獄絵図。

女子は全員泣いてしゃがみ込んで水を掛けられて、コーチに襟を掴んで無理やり立たされる。

立たせては倒れ、立たせては倒れの繰り返し。

逆起き上がりこぼし。

副キャプテンはしゃがんだ状態からなかなか上がれないので、下からお尻を思いっきり蹴られる。

反動で上がる。

しゃがむ、上がれない、プルプルする、蹴られる、反動で上がる。

繰り返し。

私はそれが可笑しくて副キャプテンをずっと見ていた。

目が合って、

「見るな!(怒)」

と言われた。

私は目を逸らしてスクワットを続けたが、やはり副キャプテンの事が気になる。

この副キャプテン、普段プライドが高く、カッコつけなのだ。

いつも髪型がキッチリ決まっている。

大学生なのにセカンドバッグを持っている。

試合で負けたあとも何事も無かったようにコートからクールに戻ってくる。

それが今、苦悶の表情を浮かべている。

泣きそうになっている。

髪型がペタッとなっている。

再び目が合うと

『見るなお前!(怒)』

と言った。

見るなと言われても気になる。

チラッと見ると、ずっとこっちを睨んでいる。

スクワットのきつさや怒りを全部私にぶつけて発散させてるようだ。

女子は水か汗か涙か鼻水か雨か分からないずぶ濡れの状態、副キャプテンは蹴られ続け私を睨み続け、私は副キャプテンを時々チラッと見る。

そして1,000回でやっと終わりと言ってくれた。

やっと3日目が終了。

合宿はもう1日あったのだが、3日目が強烈過ぎて4日目の記憶が殆ど無い。

その後合宿に参加したメンバーは大会に出てもそれなりの成績を残すことが出来たが、元々成績を残していた人が合宿に参加した気もする。

私は合宿前から練習が好きで、いつも早めに行って一人で練習をしていたが、合宿のあとからちょっと練習が嫌いになった。

合宿というのも嫌いになった。

以前古武道の教室に通っていた時、合宿をするという話になった。

「大城さん合宿に参加しますか?」

と聞かれて反射的に

「行かんよ!」

と強い口調で言ってしまい、相手をびっくりさせてしまったことがある。

体育会系の人ってほんとに合宿が好きだよなと今でも思う。

今後私はいかなる合宿にも参加することは無いと思うが、もし殺陣教室で合宿をする事になったらスクワット1000回やらす。

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