よく受ける質問の中に「斬るときに声を出したほうがいいのですか?」という質問があります。
剣道は声を出しますが、剣術は声を出しません。
その違いは何なのでしょうか。
剣道の競技中に声を出すということは、声を出した方がメリットがあるから声を出すのだと思います。
自分を奮い立たせたり、恐怖心を払拭したり、相手を威嚇したり、様々なメリットがあると思います。
では何故剣術では声を出さないかと言うと、声を出さない方がいいからです。
相手の刀が少しでも自分に当たると致命傷になりかねませんので、テンションを上げるよりも冷静さが必要になります。
斬る時に気合いの声を出して斬ると、力は出ますが体が硬直しますので、もし相手にかわされたら相手の次の攻撃をかわすことができなくなります。
相手が相討ち覚悟でいると相手の攻撃を受ける可能性が高くなります。
剣道では自分が先に有効打を入れれば相手に打たれても自分の勝ちになります。
審判もすぐに止めてくれます。
防具を着けて竹刀で打ち合うか、防具を着けずに真剣で斬り合うか、つまり命が懸かっているかの違いです。
しかも剣道は力強く打ち込んでも声を出さないと気迫がないということでポイントを取ってくれません。
更に大きな声を出すようになります。
他に似たような例えを上げると、空手家が瓦や氷を割るとき気合いの声を出しますが、実際に戦うときは声を出しません。
伝統空手は剣道と同じでポイント制で先に当てると審判が止めてくれるので剣道と同じ理由で声を出します。
ボクシングでもK1でも総合格闘技でも実際に相手を倒す競技は声を出しません。
ということで剣術の戦いでは声は出さない方がいいのですが、声を出した方がいい時もあります。
自分もしくは相手が未熟な時は声が有効になります。
冷静になるよりも大声を出して興奮した方が戦いやすくなります。
恐怖のなかにいても声の勢いで足が前に出ることもあります。
相手も威嚇されてくれます。
もう一つ、団体戦の時。
そのレベルの人は一握りですので、何十人、何百人で戦う時は声を出して一体感を出して気持ちを高揚させた方がチーム力が上がります。
剣術は基本的に1対1の戦い方で、いかに死ぬ確率を減らしていくかということですので基本的に声は出さない方がいいと思います。