
ー 多敵の位のこと
「多敵の位」というのは、一人で多数の敵を相手に戦うときの心得である。
敵の両刀をすらりと抜き取ったら、両腕を左右に広げ、両脇に提げて構えるのである。
こうすれば、何人もの敵が四方から打ちかかってきても、どちらか一方へ追い込むことができるはずである。
かかってくる敵の、誰が先で誰が後になりそうかを即時し、先にかかってきそうな相手に素早く襲い掛かって、まずこれを片付ける。
次いで、全体の動きをざっと眺めて、敵がどう打ちかかってくるかを把握したら、右手に持った大刀と左手に持った脇差を交差させるようにして次なる敵を一気に切り倒すのだ。
斬った後、敵の襲撃を待つのはよくない。
直ちに二刀を両脇に構え、敵がでてくるところへこちらから激しく斬りこんでいって、押し崩し、休むことなく、更に出てくる別の敵に強く斬りかかり、これを押し崩すのである。
一方から魚群を追い込むような要領で、どうにかして敵を追い立て、敵の隊列が乱れて重なり合うような状態になったら、チャンス到来。間髪入れず激しく打ちかかることだ。
しかし、何人もの敵が群がってるところへ真正面からまともに突っ込んでいくような愚かなやり方では、成功は望めない。
だからといって、敵がでてくるところを狙い打とうなどと考えると、待つ気持ちが生まれて敵に後れを取るので、これまた、うまくいかないだろう。
敵が攻撃してくる拍子を的確に見極め、どうすれば隊列が崩れるかを察知することが勝利を呼ぶ秘訣である。
機会を狙って、敵を何人もおびき寄せるようにして追い込む方法に習熟し、そのコツを体得すれば、一人の敵であろうが、十人、二十人という大勢の敵であろうが、安心して戦えるようになる。
