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五輪書 水の巻35

ー 一つの打ちということ

この「一つの打ち」という戦法を身に付ければ、確実に勝つことができる。
ただし、二天一流の兵法をよく学ばないと、それを会得することは難しい。
だが、このことをよく理解して鍛錬を積めば、次第に各自が心に思い描いた通りの兵法を行えるようになり、やがて意のままに勝てるようになる。

五輪書 水の巻34

ー 打ち合いの利のこと

「打ち合いの利」というのは、いわば兵法の「刀で勝つ道理」であるが、そうしたことは、こまごまと具体例を書き記す性質のものではない。
稽古に次ぐ稽古を繰り返して精進すれば、勝つ極意は自ずと体得できるはずだ。
「打ち合いの利」は、わが二天一流の兵法の真の道を教える刀の使い方であり、口伝である。

五輪書 水の巻33

ー 多敵の位のこと

「多敵の位」というのは、一人で多数の敵を相手に戦うときの心得である。
敵の両刀をすらりと抜き取ったら、両腕を左右に広げ、両脇に提げて構えるのである。
こうすれば、何人もの敵が四方から打ちかかってきても、どちらか一方へ追い込むことができるはずである。

かかってくる敵の、誰が先で誰が後になりそうかを即時し、先にかかってきそうな相手に素早く襲い掛かって、まずこれを片付ける。
次いで、全体の動きをざっと眺めて、敵がどう打ちかかってくるかを把握したら、右手に持った大刀と左手に持った脇差を交差させるようにして次なる敵を一気に切り倒すのだ。
斬った後、敵の襲撃を待つのはよくない。
直ちに二刀を両脇に構え、敵がでてくるところへこちらから激しく斬りこんでいって、押し崩し、休むことなく、更に出てくる別の敵に強く斬りかかり、これを押し崩すのである。
一方から魚群を追い込むような要領で、どうにかして敵を追い立て、敵の隊列が乱れて重なり合うような状態になったら、チャンス到来。間髪入れず激しく打ちかかることだ。

しかし、何人もの敵が群がってるところへ真正面からまともに突っ込んでいくような愚かなやり方では、成功は望めない。
だからといって、敵がでてくるところを狙い打とうなどと考えると、待つ気持ちが生まれて敵に後れを取るので、これまた、うまくいかないだろう。
敵が攻撃してくる拍子を的確に見極め、どうすれば隊列が崩れるかを察知することが勝利を呼ぶ秘訣である。
機会を狙って、敵を何人もおびき寄せるようにして追い込む方法に習熟し、そのコツを体得すれば、一人の敵であろうが、十人、二十人という大勢の敵であろうが、安心して戦えるようになる。

五輪書 水の巻32

ー 張り受けということ

「張り受け」とは、敵と打ち合っていて、ドタドタした乱れた拍子になって嚙み合わなくなったと感じたら、敵が打ってくる刀をはたいて打ち返すことだ。
「はたく」のだから、そう強く叩くのではなく、かといって、ただ受けるというのでもない。
襲ってくる敵に素早く応じる体制をとり、打ちかかってくる刀をはたくや否や、打って出るのである。
はたくことで機先を制し、さらに先手をとって打ちかかるという点が重要なのだ。
はたく拍子がドンピシャだと、敵がどんなに強く打ち込んできても、こちらにはたく気持ちさえあれば、切っ先を下げられるようなことにはならない。

五輪書 水の巻31

ー 喝咄ということ

「喝」も「咄」も、こちらが打ち込んで敵を追い詰める場面で、敵が打ち返して来たら、刀を下から敵を突き上げるようにして振り上げ、返す刀で敵を打ちのめすことを言う。

どちらも早い拍子で打つことに特徴があり、「カッ」と突き上げ、「トッ」という呼吸で打つのである。
喝咄の拍子は、どちらも打ち合いを行っているとよく出会うものだ。
喝咄のやり方は、敵を突く心持ちで切っ先を上げると同時に、一気に打ち込むのである。
その時のタイミングとリズムをよく稽古してつかみ、自分のものとせよ。

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