
兵法において、太刀をとった勝負で相手に勝つコツをつかむには、まず五つの基本型からなる「五方の構え」を知り、その太刀筋をマスターすることだ。
そうすると、体が自由に動くようになり、心の働きも活発になり、拍子も分かるようになって、太刀の技が自然と冴えてくるし、体の動きも足も運びも柔軟になって、自在に動けるようになる。
その結果、一人に勝ち、二人に勝つようになり、やがては兵法のよしあしに通じるまで成長するのだ。
だが、それで安心してはいけない。
この書に記されたことを一か条、また一か条と稽古して身に付け、敵とも戦うことで、兵法の道理を次第に会得していくのである。
このことをいつも心がけ、焦る気持ちを決して起こさず、折に触れてこの書を読み返し、様々な相手と打ち合いをし、二天一流の兵法の精神をよく理解して、千里の道を一歩また一歩と進んでいくのである。
この兵法を行うことが武士の役目であると心得て、気長に取り組むことだ。
今日は昨日の自分に勝ち、明日は自分より下手な相手に勝ち、明後日は自分より上手な相手に勝とうと思って、この本にあるように修練して、気持ちが脇道へそれないように心掛けてもらいたい。
たとえどんなに強豪に打ち勝とうと、師の教えや、流儀の教義に反するような勝ち方であっては、真の兵法の道であるとはいえない。
こうした兵法の道理がいつも自然に心に浮かぶようになれば、一人で数十人の相手に勝てるコツをわきまえたといえるだろう。
そうなったら、しめたものだ。
剣術の智力によって「多分一分の兵法」の精髄も会得できるはずである。
千日の稽古を「鍛」とし、万日の稽古を「錬」とする。
そうわきまえて、ますます稽古に励んでもらいたい。
