
ー 三つの先ということ
第一の「懸の先」は、こちらから攻撃するときの戦術で、静かにしていて突然すばやくかかっていく先手である。うわべは強くすばやく動くが、心に余裕を残す先手だ。
また、ぐっと気合いを込めて、常よりやや速めの歩き方で敵のそばに接近するや否や、一気呵成に攻め立てるという先手もある。
あるいは、雑念を捨て、最初から最後まで徹底的に敵をひしぐ意気込みで、どこまでも強い気持ちで勝ちにいく先手もある。
これらは、いずれも「懸の先」と呼ぶ先手である。
第二の「待の先」は、敵が自分に向かってかかってきたときの戦術だ。
敵が受ける第一印象として、まったく歯向かわず、弱いように思わせておいて、近づいてきたら、突然ぐっと大きく距離をとって、飛びのくかのように見せかけ、相手が油断したところを一気に打って勝つのだ。これも一種の先手である。
また、敵がかかってくるのを見て、こちらも強く出ようとするときは、敵の拍子が変わる瞬間をとらえて、一気に勝負にいくこと、これが「待の先」の道理である。
第三の「対々の先」は、敵が先に攻撃してきたときの戦術である。
こちらは静かに、だが気持ちは強く持って、敵が近づいてきたら、いきなり思い切った体勢になり、敵があわてる瞬間を狙って、どっと攻めて勝つのである。
あるいは、敵が静かにかかってくるときは、自分の体を浮かすようにしてやや速めに斬りかかっていき、敵が近づいたらひと揉みし、敵の動きに合わせて強く勝つこと。
それが「対々の先」である。
どんな戦いの始まりも、この三つの先以外にはないのである。
先手がものの見事に決まれば、もはや勝ったも同然であるから、「先手は兵法の第一」とされているのである。
どの先手を選ぶかは、その時々の理にかなったやり方を最優先し、敵の狙いを見抜き、わが兵法の智力で勝つのであるから、ここに記した概略を理解し、あとは自分で工夫してほしい。
その時々の状況に応じ、道理に従って行うのであるが、いつもこちらから先制攻撃をしかけられるわけではないので、できる限り、自分から先にかかっていって敵を引き回すなど翻弄しまくって勝ちたいものである。
先手とは、どんな場合でも、わが二天一流の兵法で身につけた智力を縦横無尽に駆使して必ず勝利をわがものとする心得のことである。
